この記事は、中堅SIerからキャリアアップして年収を上げたいな、もしくは、ワークライフバランスを整えたいな、と考えている人に向けて書きました。
私は、新卒で事業会社のSEを5年間勤めたあと、上場企業の人事を15年経験してきました。
その中で、多くの中堅SIer出身の方の面接をしてきたので、その経験を踏まえて、一つの解を出したいと思います
なお、この記事でいう中堅SIerとは、主に二次受けをしているSIerと定義し、現時点の年収が450~600万円くらいのレンジの20代~30代の方を想定しての記事なので、これに当てはまらない人は参考にしないでください。
選択肢1:大手SIer → けっこう厳しい
中堅SIerからのキャリアアップで真っ先に思い浮かぶのは、大手SIerへの転職です。
たとえば、NTTデータ、日立製作所、富士通、NEC、SCSKなどです。
こういった大手SIerは処遇水準もかなり高いですし、福利厚生も整っているので、中堅SIerから転職できれば間違いなくキャリアアップなのですが、現実問題として、選考に通るのはかなりハードルが高いです。
一般的に同業からの転職で、いわゆる「社格」が下の会社からのエントリー者に、採用サイドは厳しい目線を持つのが一般的だからです。
また、大手SIerが求めるスキルセットや経験は、中堅SIerでの業務とは異なることが多く、求められるレベルも高いです。たとえば、大手SIerでは、クライアントとの直接のやり取りやプロジェクトのリードを行う能力が重視されますが、中堅SIerではこうした機会が限られていることが多いです。
ただ、大手SIerのグループ企業であれば、採用のハードルは親会社から下がるので、そこは狙い目だと思います。
たとえば、日立システムズ、日立ソリューションズ、東芝デジタルソリューションズといった会社です。
経験者採用で、日立製作所には落ちたけど日立システムズには合格した、というケースはよくあります。
これらの会社は、処遇水準も親会社に近いですし、相対的にホワイトな勤務環境なので、中堅SIerからの転職先としては極めて有望だと思います。
選択肢2:外資系の大手IT企業 → 無理。
中堅SIerからのキャリアアップで次の候補は外資系の大手IT企業です。
たとえば、Google、Amazon、Microsoftといったところ。
でも、中堅SIerからこのあたりの会社に転職した事例はほとんどないです。
どうしても英語力やグローバルなビジネス感覚が求められまし、競争が激しく、ポジションの数も限られているため、採用されるのはほんの一握りの優秀層です。
無理、というのは言い過ぎかもしれませんが、現実的にはかなり厳しいです。
選択肢3:ITコンサル→激務を受け入れるならアリ
中堅SIerからの転職で年収アップを狙う人にありがちなのが、ITコンサルへの転職です。
ITコンサルは、クライアント企業のIT戦略を支援し、システム導入やプロジェクト管理をリードする役割を担います。
中堅SIerでの経験を活かし、より戦略的な業務に携わりたいと考える方にとっては魅力的な選択肢だとは思います。
ただ…言うまでもないのですが、激務です。
プロジェクトの進行に伴い、クライアントとのコミュニケーションやチームの管理、複雑な問題の解決に追われることが多く、長時間労働が常態化することも少なくありません。
これに加えて、プロジェクトごとに異なる業界や技術に対応する必要があり、常に新しい知識を学び続ける姿勢が求められます。
そのため、ITコンサルタントとして成功するためには、高いストレス耐性や迅速な意思決定力、そして長期的に渡る長時間残業に耐える覚悟が必要です。
また、中途採用の場合、学歴要件がそこまで厳しくないことが多いですが、それでも一定の知識とスキルが求められます。
もし、あなたが「キャリアに箔をつけたい」「短期間で大きく成長したい」と考えているなら、ITコンサルはアリだと思います。
安定とキャリアアップを求めるなら事業会社の社内SE
「激務ではなく、安定して長期的にキャリアを築きたい」「自分の専門性を深めつつ、キャリアアップを目指したい」という場合、事業会社の社内SEに転職するのが現実的だと思いますし、長期的に見て、幸せになる可能性がいちばん高いと思います。
社内SEとして働くことで、業務の安定感を保ちながら、自社のビジネスプロセスを深く理解し、その運用を支える立場で働くことができます。
中堅SIerで培った技術スキルや業務の進行管理能力を活かしつつ、さらに業界や業務に特化した専門性を高めることが可能です。
ただし、事業会社の社内SEとしてのキャリアアップを目指す際には、企業選びが非常に重要です。
高給与が期待できる業界と企業選びのポイント
日本企業では、年収が職種ではなく「業界」で決まることが多く、選ぶ業界によって年収が大きく変わります。
たとえば、同じ社内SEであっても、金融業界や医療業界、半導体業界では給与水準が高く設定されています。そのため、自分のスキルセットやキャリアゴールに合った業界を選ぶことが、年収アップを実現するための大きなポイントとなります。
では、具体的にどのような業界が高給与を期待できるのでしょうか?ここでは、特に給与水準が高いとされる業界をいくつか紹介します。
まずは金融業界です。金融業界では、セキュリティやデータ管理の重要性が非常に高く、そのために必要なITインフラの構築・運用を担う社内SEには、高度な専門知識が求められます。このため、金融業界の社内SEは給与水準が非常に高いことが特徴です。例えば、金融機関で働く社内SEは、システムの安定稼働だけでなく、リスク管理や規制対応など多岐にわたる業務を担当するため、その責任の重さに応じた報酬が得られます。
次に、医療業界です。医療業界では、デジタルヘルスの成長に伴い、ITインフラの整備が進んでいます。医療機関や医療関連企業では、技術的なスキルに加えて、医療の専門知識を持つ社内SEが重宝されます。特に、電子カルテシステムの運用や患者データのセキュリティ管理など、医療現場に直結する業務を担当する社内SEには、高い報酬が支払われる傾向にあります。
さらに、半導体業界も高給与が期待できる業界の一つです。半導体業界では、技術革新が非常に速く進行しており、その中で高度な技術スキルと専門知識を持つエンジニアが求められています。この業界では、技術の最前線で働くことができるだけでなく、その専門性に見合った高い給与が提供されるのが特徴です。同じ会社であれば、営業、エンジニア、経理、人事、そして社内SEなど、さまざまな職種に同じ給与テーブルが適用されることが多いため、どの職種を選んでも高い報酬が期待できます。
また、企業選びにおいては、親会社内に情報システム部門がある会社を選ぶことが重要です。多くの企業では、社内SEを情報システム子会社に集めていますが、この場合、親会社と比べて年収が落ちることが多々あります。したがって、親会社内に情報システム部門がある会社を選ぶことで、同じ業務内容でもより高い年収を得ることができます。社内SEとして年収をアップさせるためには、このような業界選びや企業選びが鍵となります。
転職エージェントを賢く活用して年収アップを実現する
自分の年齢とスキルに見合った適切な年収を得るためには、転職エージェントの活用が非常に有効です。転職を考える際、多くの方はまず求人サイトをチェックするかもしれませんが、ここでの年収情報は「500~850万」のように広いレンジで記載されていることが多く、正確な年収の目安を把握するのは難しいです。
一方で、転職エージェントは各企業の「この年齢だったら、これくらいの年収テーブルだな」という社内データを持っています。これにより、あなたのスキルと年齢に応じた具体的な年収の目安を提供してくれるため、自分の市場価値を正確に理解することが可能です。さらに、エージェントはあなたの理論年収の30%をフィーとして受け取るため、年収アップに協力的です。キャリア面談を通じて、適切なアドバイスを受けることで、年収アップを実現できる企業やポジションを見つけることができます。
転職エージェントを利用することで、希望する年収やポジションに合った求人を見つけやすくなり、効率的に転職活動を進めることができます。特に、年収を大幅にアップさせたいと考えている場合、自分一人での情報収集だけでは限界があるため、エージェントのサポートを受けることが非常に重要です。
年収交渉のテクニック
日本企業において、年収交渉はそれほど効果的ではないことが多いですが、それでも交渉の際に知っておくべきポイントがあります。日本企業の多くでは、年齢と年収が大まかに相関する給与テーブルが存在しており、このテーブルに基づいて給与が決定されるため、交渉の余地は限られています。しかし、それでも上手に交渉することで、少しでも有利な条件を引き出すことが可能です。
効果的な交渉方法の一つとして、「御社における、私と同年齢の方の平均的な年収水準を希望します。」というフレーズを使うことが挙げられます。このフレーズを使うことで、具体的な金額を提示することなく、適切な年収を希望していることを示すことができます。企業側にとっても、同世代の社員と同じ年収水準で採用するのは社内的に説明がしやすく、トラブルを避けることができます。
また、年収交渉の際には、自分のスキルや経験を具体的にアピールすることも非常に重要です。たとえば、「私はこれまでに○○のプロジェクトをリードし、△△の成果を上げてきました」といった具体例を挙げることで、自分がどのような価値を提供できるのかを明確に伝えることができます。これにより、企業側もあなたの価値を正当に評価し、それに見合った報酬を提供しやすくなります。
まとめ: キャリアアップと年収アップのための次の一歩
この記事では、中堅SIerでのキャリアを活かして年収をアップさせるための具体的な方法を紹介しました。適切な業界選びと転職エージェントの活用が、社内SEとしてのキャリアアップと年収アップの鍵です。あなたの経験とスキルを最大限に活かし、新たなステージでさらなる成長と報酬を手に入れるために、今こそ次の一歩を踏み出しましょう。転職は簡単な決断ではありませんが、その先に待っているキャリアの可能性を信じて、勇気を持ってチャレンジしてください。