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社内SEからSIerに転職することの危うさ|上場企業の人事が語る

社内SEとしてのキャリアに不安を抱いて、SIerへの転職を考えるのは、よくあることですし、その気持ち、すごい分かります。

トモハル

僕も金融機関の情報システム部門で5年働いていたので、SIerへの転職が頭をよぎったことがありました。

キャリアアップや新しいスキルの獲得、高い年収を目指すインハウスのSEにとって、SIerの世界は非常に魅力的に映るんですよね。

「多様なプロジェクトにジョインできて、もっと成長できそう。」「年収水準も1.2倍にはなりそう。」みたいな。

ただ、社内SEからSIerに転職して、うまく転職先にフィットして活躍している人は、マイノリティだと思います。

この記事では、その原因を深堀りしたいと思います。

仕事内容とスキルセットが全く違う

社内SEからSIerに転職するにあたっては、仕事内容も違えば、求められるスキルセットもなにもかも違う、ということを理解しなければなりません。

仕事内容の違い

まず、仕事内容の違いからです。

社内SEの仕事内容

社内SEとして働く場合、主な業務は社内のユーザーと要件定義を行い、それをベンダーや協力会社に発注・ディレクションすることがメインになっていると思います。

社内SEの仕事は、超上流工程に位置し、ビジネスサイドに近いところでの業務が多くなります。具体的には、以下のような内容が含まれます。

  • 要件定義とベンダー管理: ユーザーのニーズを把握し、最適なシステムを提案・構築するためにベンダーや協力会社と連携します。
  • 運用保守: 新規システムの構築は少なく、既存システムの運用や保守が主な業務となります。
  • 予算管理と発注業務: システム発注やそれに伴う予算管理を行うため、システム・技術以外の雑務も多くなります。特に社内手続きや予算管理に詳しくなることが多いです。

社内SEとしての経験は、システムの運用保守やユーザーとのコミュニケーション能力、社内のビジネスプロセスに対する深い理解を培うことができますが、技術面での深い知識や新しい技術の習得には限界があるかもしれません。

まぁ、この技術習得への不安が、SIerへの転職を考える際のあるあるキッカケではあります。

SIerの仕事内容

一方、SIerの主な業務は顧客のシステム提案や開発です。SIerは、要件定義以降の工程に関わることが多く、社内SEに比べると、下流工程がメインとなります。

具体的な仕事内容としては、以下のような内容が含まれます。

  • システム提案と開発: 顧客のニーズに基づき、システムの提案から設計、開発、導入までを担当します。
  • プロジェクトマネジメント: 複数のプロジェクトを同時進行で管理し、納期や予算を守りながら進行させます。
  • 技術の習得と応用: 実際に動くシステムを作るため、最新の技術やツールを使いこなし、技術スキルを磨く機会が多くなります。

スキルセットの違い

仕事内容がこれだけ違うので、社内SEとSIerでは、求められるスキルセットも根本的に異なります。

社内SEは、ビジネスプロセスの理解や社内手続きの知識が重視される一方、SIerは技術スキルやプロジェクトマネジメント能力が重要となります。

同じIT業界と一括りに考えるのは、愚の骨頂とすら言えると思います。

「SIerに転職して、技術スキルやプロジェクトマネジメントを伸ばしていくんだ!」という気持ちは痛いほど分かりますが、体に染みついた思考回路や行動様式というのは、なかなか変えられないんですよね。

実際に社内SEからSIerに転職した人の多くは、この点で、なかなか適応に苦しんでいるパターンかなと思います。

業務における立場・働き方も違う

社内SEは、ベンダーや協力会社に発注する立場です。

この「発注側」というのくせ者で、どうしても、ベンダーや協力会社に対して強い立場になりがちです。

それが、時々出現する「傲慢な態度の勘違い野郎」を生み出す原因だと思います。

(ただ、そういう輩は、そんなに出世しません)

また、社内業務であるため、ワークライフバランス(WLB)を保ちやすいのも特徴です。デッドラインや会議の時間を調整しやすく、有給休暇も取得しやすい環境です。

さらに、産休や育休を経ての復帰もしやすいため、女性が長く働き続けやすい職場環境が整っています。

一方、SIerは受注側の立場になります。

クライアントワークなので、スケジュールはどうしても顧客都合を優先せざるを得ません。その結果、ワークライフバランスは大きく変動することがあります。

(あなたも、ベンダーや協力会社に、会議日程の調整をお願いした経験はあるのではないでしょうか。)

社内SEからSIerに転職するということは、これらの立場が逆転するということです。

社内SEからSIerに転職した時に苦労するポイント

社内SEとSIerでは、仕事内容、スキルセット、立場、働き方にこれだけ違いがあるので、転職した際に苦労するケースがあることは容易に想像できると思います。

スキルセットが合わない

社内SEで培ったスキルは、基本的にSIerの業務には使えないと思った方がよいです。
(もちろん、まったくの別業種から転職するのに比べて用語の意味とかは分かるかもしれませんが。)

社内SEとして培った、社内手続きや予算管理、ベンダーとのコミュニケーション能力は、SIerに移った際に「クライアントの事情を理解できる」くらいにしか役に立たないかな、と思います。

SIerでは技術力やプロジェクトマネジメントの能力が求められます。このため、転職後に新たなスキルを習得する必要があり、それは、思った以上に負荷のかかることだと思います。

思考回路が違う

社内SEとSIerでは、仕事に対するアプローチや考え方が根本的に異なります。

社内SEは、長期的な視点でシステムの運用や保守を行い、社内の業務プロセスを改善することが主な役割です。

一方、SIerは、プロジェクトごとに異なる顧客のニーズに応じてシステムを提案・開発するため、短期的な成果を求められることが多いです。

この思考回路の違いに適応するのに苦労するパターンも多いです。

ワークライフバランスの違い

働き方の違いでも触れましたが、SIerはクライアントの都合に合わせて働くため、ワークライフバランスが大きく変わる可能性があります。

これに対して、社内SEは比較的安定したスケジュールで働くことができ、ワークライフバランスを保ちやすい環境です。

転職によって、このバランスが崩れることに対する覚悟が必要です。

SIerへの転職を考える前に

全体的にSIerのネガティブキャンペーンのようになってしまいましたが、SIerではITのスキルセットが効率的に伸びるため、覚悟と体力があるならば、自身のマーケットバリューを高めるには非常に良い選択肢だとは思います。

ただ、シンプルに「年収を上げたい」ということであれば、別業界の社内SEに転職する方が、あまり苦労がないというか、コスパはよいと思います。

この点については、別記事に詳しく書いたので、こちらもご一読いただけたらと思います。

まとめ

社内SEからSIerへの転職の危うさについて、詳しくお伝えしてきましたが、それを理解したうえでチャレンジすることは良いことだと思います。

社内SEからSIerに転職してスキルセットと年収をアップさせて、また、社内SEに戻る人たちもたくさん見てきましたしね。
(これは、けっこう、幸せになるパターンだと思います)

また、転職サイトを見ていると、SIerの年収レンジを見て、転職したいと思い始める気持ちもよく分かりますが、自分の年齢やスキルセットからするとどのくらいのレンジが狙えるのかは、IT系に強い転職エージェントに登録して面談を受けるのが手っ取り早いと思います。

(求人票の記載はレンジがあるので、自分では判断できないです)

皆さんに幸あれ。