こんにちは。ハルオと申します。この記事では、ユーザ系SIerからの転職について考えていきたいと思います。(アプリ系もインフラ系もまとめて対象にします)
私自身は、新卒で生命保険会社に入社してすぐに、その情報システム子会社(いわゆるユーザー系SIer)に出向となり、汎用系のSEを5年間経験しました。その後、人事部に移り、結果として上場企業3社で人事を経験しています。
これまで、私の先輩同僚後輩でユーザー系SIerから転職する人を数多く見てきていますし、人事としてユーザー系SIer出身者を採用してきました。
「正直、転職しない方が幸せだったのでは?」という方も見てきているので、これから転職しようかな、と思っている人が読んでくれたら嬉しいなと思います。
ちなみに、この記事でのユーザー系SIerは、「親会社から受注したシステム開発と運用をする会社」と定義します。
たとえば、三菱UFJインフォメーションテクノロジー、ニッセイ情報テクノロジー、第一生命テクノクロス、東京海上日動システムズ、SOMPOシステムズ、日鉄ソリューションズ、JFEシステムズ、ヤマトシステム開発、ANAシステムズ、JR東日本情報システム、トヨタシステムズといった会社のことです。(もちろんこれ以外にもたくさんあります)
本当にユーザー系SIerから転職すべきか?
この記事では、IT業界の中ではスキル・経験が評価されづらい(マーケット価値が伸びづらい)ともいわれるユーザー系SIerのSEが転職するなら、どういう点に気を付ければよいか、ということを深掘りしていきたいと思います。
ただ、その話をする前に、「いろいろなIT企業を見てきたけども、ユーザー系SIerってIT業界の中でもそんなに悪くないよね。」っていうことをお伝えしようと思います。
私の周りでもユーザー系SIerから転職したけど、「転職しない方が幸せだったのでは…」と思うのは、ユーザー系SIerがけっこう良い環境だからです。
そもそもユーザー系SIerは悪くない環境だ。
ユーザー系SIerが働く場所としてそんなに悪くないと思うのは、下記の理由からです。
- 待遇がそんなに悪くないし、安定している。
- ほぼ転勤がない
- 割と人を育てる風土がある
- 人当たりの良い人が相対的に多い(例外あり)
けっこう待遇が良く、安定している
ユーザー系SIerの待遇は、IT業界の中でも割と良くて、安定している部類に入ります。つきつめれば「大企業の子会社」なので、親会社の7~8割の水準が目安になります。
OPENWORKや転職会議などの転職情報サイトから調べた平均年収、30歳・40歳・50歳時点の平均年収は下記のとおりです。
会社 | 平均年収 | 30歳年収 | 40歳年収 | 50歳年収 |
三菱UFJインフォメーションテクノロジー | 687万 | 681万 | 889万 | 942万 |
ニッセイ情報テクノロジー | 589万 | 546万 | 772万 | 698万 |
第一生命テクノクロス | 525万 | 520万 | 588万 | N/A |
東京海上日動システムズ | 614万 | 584万 | 826万 | N/A |
SOMPOシステムズ | 640万 | 550万 | 699万 | 796万 |
日鉄ソリューションズ | 731万 | 704万 | 869万 | N/A |
正直、親会社からの出向組と比べると、「同じ仕事をしているのになぜ…」と思う気持ちはすごくよく分かります。
が、彼ら出向組は、親会社に戻って情シ以外の仕事をする可能性もありますし、全国転勤の可能性があるわけです。
転勤リスクがない分、少し待遇が落ちてしまうのはしょうがないかな、と割り切れれば、十分に高い水準だと思います。
ほぼ転勤がない(=ほぼ東京勤務)
この「ほぼ転勤がない」というのは、ユーザー系SIerに勤める最大のメリットと言っても過言ではないです。
何度でも言いたいのですが、「ずっと首都圏で暮らせる」というのはライフプランを考えるうえで、極めて重要な要素です。
(個人的には、これだけで、年収4割増しくらいに考えてもよい要素だと思います)
若い頃は「学生時代の友人とすぐに遊べる」「遠距離恋愛を避けられる」というメリットもありますし、ある程度年齢を重ねて結婚したとして、「単身赴任を避けられる」というのは、本当に本当に大きいです。
仮にユーザー系SIerからキャリアアップを狙って転職するにしても転勤がない会社を選ぶ、というのは必須条件だと思います。
むしろ、現職のユーザー系SIerが転勤アリの会社であれば、それだけで転職を考えて良いと思います。
割と人を育てる風土がある
ユーザー系SIerは、IT業界の中でも割と大事に人を育てる風土がある会社が多いです。研修や社外研究会に派遣することにも積極的ですし。
大企業の子会社ということもあり、そういった良い意味での「余裕」みたいなものはユーザー系SIerならではだと思います。
客先常駐(いわゆるSES)だとこうはいかないんですよね。研修やら社外研究会に参加しようにも、その分の工数どうするの?っていう話しになりがちなので。
人当たりの良い人が相対的に多い(例外あり)
最後になりますが、ユーザー系SIerは人当たりはよい人が多いです。
私自身、ユーザー系SIerに10年勤めていましたが、理不尽な怒りをぶつけてきたり、意味不明な要求をしてくるような人はほとんどいませんでした。
もちろん例外はありますし相性の問題もありますが、「この人、頭がちょっとおかしい」という人の出現率は低いのがユーザー系SIerの特徴だと思います。
この点が世の中で言われる「ユーザー系SIerはゆるふわホワイト説」というイメージにつながっているのかなと思います。
ユーザー系SIerのよくないところ
逆に、キャリアを重ねるうえで、ユーザー系SIerのよくないところを挙げれば、次の3点です。
- 親会社からの出向者がいるので出世しづらい
- 業務がルーティン化し、飽きる
- 最新技術には触れづらい
親会社からの出向者がいるので出世しづらい
親会社からの出向者の存在については、ユーザー系SIerに勤めていれば説明不要でしょう。こればっかりは、「大企業のIT子会社」なので仕方ないんですよね。
会社によって違いますが管理職(課長級)になるのもかなりハードルが高いですし、部長級以上はほぼ出向者で占められている、というのがほとんどのユーザー系SIerの現状です。
あと、いわゆるキーポジション(システム開発を統括する部門、経営企画、人事、経理)は親会社からの出向者で占められているのも大きな特徴です。
「大企業の子会社」という安定性の裏返しなのですが、年齢を重ねるにつれて、この問題は重くのしかかると思います。
なぜなら、「定年を主任級で終える社員がほとんどだ」ということを意味するからです。
さらに多くのユーザー系SIerでは、ある時点(だいたい主任になったタイミング)から裁量労働制が適用されるんですよね。
いわずもがな、残業代が固定となり、いくら忙しいプロジェクトにアサインされたとしても、年収が増えることはありません。
この裁量労働制が適用されたタイミングでモチベが下がるのは、ユーザー系あるあるです。
(働き盛りのタイミングで裁量労働制を適用させるのは、本当によくできた仕組みだと思います)
モチベの問題もありますが、処遇のアップサイドが決まっているというのは、生涯年収で見るとかなり痛いと思います。
共働きであれば十分だと思いますが、そうでなければ、ちょっと厳しいかなと思います。
もし、この点についてどうしてもモヤモヤするのであれば、転職活動をした方がよいと思います。
このモヤモヤを抱えながらキャリアを重ねるのは、かなりシンドイです。
業務がルーティン化し、飽きる
ユーザー系SIerでも特にインフラ系だと、同じ業務の繰り返しで飽きる、というのはあるあるです。
まぁ、大きな変化を望まずにユーザー系SIerに入社する人も多いので、あまり不満がない人もいますが、実際に何年も同じような仕事をしていると限界を感じる人も出てきます。
同じ企業内のシステムを長期間運用するため、業務がルーチン化しやすく、挑戦的なプロジェクトや多様な業務経験が少なくなることがあります。これにより、モチベーションの低下やスキルアップの機会を逃す可能性があります。
最新技術には触れづらい
これもユーザー系あるあるです。
いちばんありがちなのが、耳障りの良いフレーズで最新技術を追うといいながら、実際の業務にはほとんど適用されないパターンです。
最新技術を研究するという建前の数人の部署が設置されるのもあるあるです。
スキルと知識が陳腐化するので、どうしても市場価値が下がりがちです。
次はそんなゆるふわ社会人が転職を思い立った理由について振り返ってみたいと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました。
ユーザー系SIer経験の市場価値
ここから先は、上場企業3社で人事を経験してきた立場から私見を述べたいと思います。
(それってあなたの感想ですよね?という突っ込みはいったん無しでお願いします)
「ユーザー系SIerでの勤務経験は転職市場で評価されづらい」という俗説は、ある程度事実だと思います。
ユーザー系SIerの業務経験は、主に自社のシステムの運用・保守であり、新技術や多様なプロジェクト経験を積む機会が少なく、技術的な成長が制限されると見られがちだからです。そのため、転職市場で求められるスキルや経験に対してアピールできる部分が少ないんですよね。
ただ、人事の立場からすると、35歳くらいまでなら、ユーザー系SIerでプロマネの経験があり、そこそこ修羅場(鉄火場)をくぐっていれば、キャリアアップを狙えると思います。
ここで言う修羅場とはカットオーバーできるかの瀬戸際を経験したり、夜間の緊急コール対応を乗り切った経験を意味します。
また、キャリアアップとは処遇や社格を上げることを意味します。
もっと踏み込んで批判覚悟で整理すると、人事的には履歴書・職務経歴書で下記の項目が当てはまる項目が多いほど、安心して採用できます。
- 職務経歴がキレイであること(新卒から転職無し)
- そこそこの人月のプロマネ経験があること
- インフラ経験があること
- IPAの資格を持っていること(できれば高度1つ)
- 学歴が良いこと(国立大・MARCH以上の理系)
あとは、面接で普通にコミュニケーションが取れれば、採用選考に通る会社は出てくると思います。会社によって違いますが、書類選考に通って面接まで辿り着けば2~4割くらいの確率で合格すると思います。
なぜなら、面接はわざわざ業務時間を割いて行うから無駄な面接はしたくないからです。人事としても、現場のマネージャに「なんでこんな奴との面接を組んだの?」って言われたくないんですよね。
なので、書類選考は厳しめに見ます。その分、面接はコミュニケーション能力の確認がメインになります。
転職するならどこが狙い目か
ユーザー系SIerからの転職での狙い目がどこになるかというと、日系大企業のIT部門(つまり社内SE)か大手SIerです。
この2つが、処遇と社格を上げられる可能性が高く、安定しているからです。
特に、事業会社のIT部門はオススメです。情報システム子会社ではなく、その親会社のIT部門に入社できれば、これまでの経験をほぼそのまま活かしつつ年収を上げられますし、ほぼ転勤がないという働き方を手に入れることができるからです。
転職エージェントに登録して、職務経歴書を作成したら、ある程度の数のエントリーをする必要があります。
JTCのIT部門、通信キャリア、大手独立SIer、シンクタンク系SIerあたりにどんどんエントリーしましよう。
正直、スキルセット・経験が募集ポジションとマッチするかどうかは運に大きく左右されます。書類選考で落ちることも多々あると思いますが、気にせずどんどんエントリーすればよいと思います。
ちなみにユーザー系SIerからの転職希望者がいちばん引っかかりやすい罠が、メガベンチャーです。サイバーエージェントとか楽天とか。
このあたりは、社風が合わなすぎますし、実は給与水準がそこまで高くないです。
キラキラ輝いて見えて魅力的なのは分かりますが、ユーザー系からメガベンチャーに行って幸せになった人を見たことがありません。
どのエージェントを使うか
ユーザー系SIerからの転職の場合、イケイケのベンチャーやメガベンチャーではなく、JTCだったり大手SIerが狙い目になるので、あまりニッチな転職エージェントを使う必要はないです。
なぜなら、大手企業はニッチなエージェントとあまり付き合いがないからです。ニッチなエージェントを使うにも社内説明が必要なので、面倒なんですよね。
人事目線で言うと、次の3つに登録がいちばん効率が良いと思います。
①リクルートエージェントは言わずもがな転職エージェントの最大手で、大手企業はまずリクルートに声をかけるのでここは外せません。
②ビズリーチは、ダイレクトリクルーティングの草分けであり最大手です。職務経歴で企業側の検索にうまく引っかかれば、スキルセットがはまるポジションのスカウトが来ることもあるので、登録は必須です。
③社内SE転職ナビは、大企業の社内SE案件に特化したエージェントです。ニッチなエージェントを使う必要は基本はないのですが、ユーザー系SIerから大企業の社内SEを狙うのは狙い目の転職先なので、ここだけは登録しておきましょう。